生活再建仮設住宅と応急修理制度

災害で自宅に被害があった場合に利用できる制度に「仮設住宅」と「応急修理制度」があります。それぞれの制度について理解したうえで慎重に検討して利用しましょう。

目次

仮設住宅とは

自宅が被害に遭った場合、ひとまずは公共施設などの避難所に身を寄せる場合も多いでしょう。また、やむを得ず損壊している自宅で在宅避難をする方や、車中泊を余儀なくされる方もいるかもしれません。いずれの被災者も、次の段階として、仮の住まいを探す必要があります。

そのとき、法律に基づく公的な支援制度として知っておいてほしいのは、「応急仮設住宅」です。いわゆる「仮設住宅」のことで、「災害救助法」が根拠になっています。災害救助法が適用されるのは、「多数の者が生命又は身体に危害を受け、又は受けるおそれが生じた場合」など一定規模以上の災害です。

仮設住宅の種類

応急仮設住宅(仮設住宅)には大きく2種類あります。
「建設型応急住宅」「賃貸型応急住宅」です。賃貸型応急住宅は「みなし仮設」とも呼ばれます。

建設型応急住宅には、様々なバリエーションがあります。プレハブ住宅であったり、移動式のトレーラーハウスであったり、木造の一戸建てタイプや、2~3階建てのアパートタイプの施設が建設される場合もあります。また、「福祉仮設住宅」といって、老人居宅介護等事業等を利用しやすい構造の仮設住宅が建設されるケースもあります。

賃貸型応急住宅(みなし仮設)は、民間の集合住宅や一戸建てを自治体側で借上げ、そこに被災者が住むタイプの仮住まいです。既存の住宅を利用するので、設備などは十分に整っていることが多いのがメリットです。

仮設住宅の入居要件

仮設住宅への入居が認められるのは、原則として、自宅が「全壊」(損壊割合50%以上)、または流失・焼失等の被害を受けた場合に限ります。しかし、実際は「半壊」程度以上の被害を受けていれば、入居を柔軟に認める運用がなされてきました。

また、住宅の建物被害が軽微でも、著しい地盤被害、インフラの断絶、二次被害の発生のおそれ等の理由で住むことができない場合には、柔軟に仮設住宅への入居が認められてきた実績もあります。

応急修理制度とは

住宅が「準半壊」以上(損壊割合10%以上)の被害認定を受けた場合で、修理が可能な場合には、「応急修理制度」が使える場合があります。これも災害救助法が適用された場合の公的支援です。被災住宅について日常生活に必要な最小限度の部分の修理支援を行う制度です。

「半壊」以上(損壊割合20%以上)の場合には、現在の基準では、70万6000円までの支援を受けることができます。それ以上の修理は自己負担となります。

「準半壊」(損壊割合10%~20%未満)の場合には、現在の基準では、34万3000円までの支援を受けることができます。それ以上はやはり自己負担です。

ここで注意が必要なのは、応急修理制度は、補助金や給付金を受け取れる制度ではなく、現物支給の修理サービスであるということです。すなわち、被災者が自治体に対して修理支援を申請し、自治体のほうから修理業者が派遣され、上記の基準額の範囲内で、重要な部分に限った修理を行うという仕組みになっています。
自分で修理業者と契約してお金を払ってしまった場合に、あとから基準額のお金がもらえるというわけではありません。制度の利用を希望する場合は、十分に注意が必要です。

応急修理制度を利用すると仮設住宅には入居できない

気をつける必要があるのが、応急修理制度の利用と、仮設住宅の入居は、そのどちらかしか選べないのが、現在の災害救助法の原則的運用だということです。例えば、とりあえず住宅の応急修理制度を利用して住宅の修理を試みたが、予算内で思うように修理できなかったので、やっぱり仮設住宅への入居を希望したい、などということはできないのです。

近年、例外的に応急修理に時間がかかる場合に、その期間中に限って、仮設住宅への入居を認めるという運用が行われるようになりました。しかし、いずれにせよ応急修理制度の利用をしてしまうと、年単位での仮住まいに仮設住宅を選ぶことができなくなることに変わりはありません。応急修理制度の利用には、慎重な検討が必要になります。

被災後の「仮住まい」を考えよう

これまでの研究成果によれば、南海トラフ地震や首都直下地震などの巨大災害が発生すると、90万人以上の被災者が、仮設住宅や公営住宅に入居できない可能性があると指摘されています。民間の賃貸住宅候補や建設予定の仮設住宅を合わせても、仮住まいの絶対数が不足してしまうのです。

もし、自然災害で自宅に住めなくなってしまったら、私たちはどこに「仮住まい」を求めたらよいのでしょうか。災害救助法による仮設住宅の支援のみならず、自助によるセカンドハウスや期限付き移住、自治体連携による受け入れ自治体への広域避難、マンション内部での在宅避難など、様々な選択肢を考えておく必要があります。

出典:岡本正|銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・気象予報士・博士(法学)

2024年08月29日公開

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